『先輩?』


卵コーナーの人混みから少し離れたところで、あたしの手を掴んだ相手は、あたしの顔を覗き込むように、声をかけてきた。


「三田くん?」

『わぁ!!先輩じゃないですか!』


その相手は、あの三田遥翔だった。ぱあっと明るくなった彼の笑顔は、眩しすぎて直視できないほどだった。そんな彼は、掴んでいた私の手を離し、自分の持っているスーパーのかごから卵のパックを1つ出す。


『はい、先輩。卵欲しかったんですよね?』

「え…うん、そうだけど」

『1パックあげます!どうぞ』


三田君はそう言って、あたしに卵を差し出す。


――ここはもらうべきなのだろうか?それとも断るべき?


――ガサッ


「ん?え?!ちょっと!」


彼は卵を私のかごへと入れた。考えていた私はすぐに顔をあげて、三田くんに驚く。