「卵ー卵ーって人多っ」


卵コーナーに着いたのはいいのだが、タイムセールだからか、あたしの目の前には、たくさんの人が集まっていた。みんなの、卵を手に入れたいがために必死になっている姿に、少しためらった。


――私も負けてられないわっ!


「卵くださーい!」


あたしは、その人混みの中に割って入ろうとしながら、大声で店員さんに訴える。しかし声は届かず、主婦たちには押しつぶされてしまうほどだった。あたしの身長では前がどうなっているのかもわからない。卵が残ってるのかすらもわからない。焦って背伸びをしてみるも、やっぱりダメである。


――諦めるしかないようね…


あたしはそう思い、卵コーナーから離れようとした時だった。


「うわっ」


いきなり後ろから腕を掴まれた。