『雅』


すると突然、後ろからあさみんの声ではない声がした。それも、久しぶりに近くで聞いたかのような、優しい声。


『あ、神城君』


あさみんの今の一言で、声の主が確定した。


『愛沙美ちゃん、ちょっと雅借りてもいい?』

『どうぞ~』


あたしはまだ、龍の顔を見れなかった。少し不安な表情で、あさみんの顔を見ると、あさみんは、口パクで「がんばれ」とだけ言って、あたしに手を振る。