その正体は龍だった。


「ちょ、っと!龍!」


あたしは口元にあった龍の手を、振りほどく。


『よぉ、雅。久しぶりだな』

「何が、久しぶりだな…よ!いきない口を抑えないでよね!それにあたしはニヤけてないわよ!笑ってたの!」

 
威勢よく、突っ込んだが、あたしの口元にあった龍の腕は、ゆっくりと腰の高さまで来て後ろから抱き締められてる状態になる。その行動に、あたしは胸が高く鳴った。


『お前、ほんっと小さいのに威勢だけはいいのな』

「何よそれ!て、てか、腕!腰のとこの手!」

『ん?これのこと?』


龍はそう言うと、あたしの腰に巻いた腕の力を、わざと強めた。それに対抗して、あたしは離れようと必死に動く。


『無理無理~』

「……もう、バカ」


まったく離れようとしない龍。あたしの頬はだんだんと熱くなってくる。それを、彼に見られないように、あたしは下を向いた。

――今でも龍に触れられるのは、慣れなくて恥ずかしい。

それを察したのか、龍はあたしの耳に口を近づけ囁くように言う。


『可愛い奴め…』

 
みんなには聞こえない小さな声が、あたしの耳から体中に行きわたった。あたしの頬は熱くなる一方だった。