あさみんが後ろからあたしの名前を呼ぶ。
「なによ?たとえあさみんが何と言おうと、あたしはあんこちゃんを許さないわよ!愁君に言いつけてやるわよ!」
『雅ってば』
「さっきからな……ぶッ」
バフッと耳に入ってきた音と共に、あたしの顔面がつぶれた感じがする。目の前を見ると一瞬真っ暗になる。あたしはすぐさま顔を離した。
『ご、ごめん!大丈夫!?』
頭上から聞こえてくるのは、龍よりも少し背が高い、男の子の声。あたしは、顔を上に向け、ぶつかった相手を見上げた。
――高っ!
『ちょっと雅、謝りなさい!』
唖然と相手を見上げたまま黙っていたあたしに、あさみんは寄ってきた。
「…あ、すいません」
あたしは顔を下に向け、いかにも失礼な格好で彼に向かって謝った。今目の前にいる、この男の子は、あんこちゃんと入学式中にイケメンと言っていた、あの茶髪の子だった。


