『雅……』


久しぶりに見る彼は、寂しそうにそう言った。


「……帰って」

『なんで、そんなこと言うんだよ。この前は置いて行ったりして、本当に悪かった』

「もういいの。ちょっと考えたい」

『それって、どういう「少し距離を置こう」』


あたしは龍の言葉を遮った。そう言った後、静かにドアを閉めた。そして、静かに泣いた。


――龍の言葉に嘘はない、それはわかっていた。言葉では、「もういい」と言っていた。でも、やっぱり心の奥底では、峰崎先生のことをうらやましく思ってしまっていた。自分はなんて醜い人なんだろうか。一度、落ち着きたかった。