何も言わずに、先輩はこちらへと歩いてきた。彼女の顔がはっきりと見えたときにわかった。雅先輩は泣いていた。


「先輩?……泣いてます?」


泣いているのは明らかだったが、確認するかのように俺は聞いてしまった。


――次の瞬間。


『なんでよ~!……う、ひっく』


俺の胸をトントンと叩きながら泣き始め、叩き終わったと思ったら、シャツをぎゅっと握りしめてきた。


泣いている理由はわからなかったが、俺は詳しく聞くことはなく、ただ彼女を抱きしめた。先輩が泣き止むまで、優しく抱きしめたのだった。


◆◆◆◆◆◆


数分すると、先輩は目をこすって俺から離れた。


『ごめんなさい、いきなり』


そして、謝るのだった。