『あれ、先輩?お出かけですか?』


エナメル鞄を斜めにかけた制服姿の彼を目の前にして、あたしの目には涙があふれてきた。



「どうして……いるのよ」

『部活帰りですよ』

「そうじゃなくて……」


――どうして今、このタイミングに三田君がいるのよ。


優しく笑う彼に、あたしは近づいた。


『先輩?……泣いてます?』

「なんでよ~!……う、ひっく」


三田君の胸を軽くトントンと何度もたたきながら、あたしは子供のように泣き始めた。そんなあたしを、三田君は黙って抱きしめたのだった――。