『雅、俺に元気ちょーだいよ』


屋上手前の階段の踊り場で、龍があたしにそう言った。


「は?何言ってんのよ?気合の平手打ちとか??」

『バカか、そんなんもらっても嬉しくねぇわ。俺がもらって嬉しいのは――』


龍の手があたしの腰に回され、ぎゅっと龍の方へ引き寄せられた。


『これだよ』


そう言って、彼の親指があたしの唇をなぞる。


チュッ、と静かに鳴るリップ音が、耳に入ってくるだけで恥ずかしくなってしまう。


『さんきゅっ』

「何が、さんきゅっ、よ!早く着替えに行ったら?」

『素直じゃねぇな~~!着替えに行くけど、まだ時間に余裕あるだろ。とりあえず、教室戻るぞ』


そう言って、また龍はあたしの手を引っ張るのだった。