『最中って置いてきたの光瑠くん』


少し呆れ気味のあさみんの言葉のすぐあとに、「あたし見てくる」と言って、あたしは光瑠くんの脇をすり抜け、教室を出て行った。


無意識に歩く速度が速くなるのが自分でもわかった。


「あ」


自販機近くの窓から外をジッと見つめている、龍を見つけるあたしは、声を漏らす。すぐに、近寄って、彼の名を呼んだ。


「龍」


あたしの気配に気づいた龍は、ゆっくりとこちらを向く。


『どうした?』


思っていた以上に、龍の表情は穏やかで、落ち着いて見えた。