『急いでたのに、呼び止めちゃってすいません』

「ううん、大丈夫だよ三田君」


あたしを呼び止めたのは、三田君だった。三田君も体育祭の応援練習なのか、ジャージ姿で少し照れているようにニコッと笑った。



『できるなら先輩と一緒の軍がよかったんですけど、敵同士になっちゃいましたね』

「三田君、赤軍だっけ?」

『そうです、俺負けないッスから』

「あたしだって負けないわよ!」



あたしはそう言って、両手を腰に置いて威張るような態度をとった。


『ははっ、先輩って……本当』


途中まで言葉を発した三田君は、優しく微笑み、あたしの頭を軽くなでた。


「え?」


とっさの行動に驚いたあたしは、囁くように声を漏らす。