先輩が悲しむ顔を見たくなかったからだ。
でも、俺は、彼氏のいる先輩を、自分のものにしたいなんて思うほど肝が据わってはいない。それに、そもそも自分のそばにいてほしいとかじゃなくて、ただ笑っていてほしいだけなんだ。
『何考えてるかは、だいたい予想はできるけどさ……』
「え?」
俺は考えることに夢中で、蜜の言葉を聞き逃す。
『遥翔は人が良すぎるんだよ』
蜜の言葉に俺はキョトンとしてしまう。蜜はそれに気づいて、「ちっ」っと舌打ちをした。
――俺はまだこの時、本当に恋というものを知らなかった。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
設定されていません
読み込み中…