外へ出てみると、もうあたりは真っ暗だった。
「さむっ」
少し冷たい空気に思わず俺は言う。
『もう春なのにねー』
「あぁ」
電灯の光で2つの影ができる。空を見上げても、そんなに星は出ていなく、月だけが姿を現していた。
沈黙のまま歩き続けていると、広佳が口を開いた。
『ねぇ龍?』
「ん?」
『私が帰ってきて嬉しい?』
「はぁ?別に」
『とか言ってー。私なんかびっくりしたんだから!初めて担当するクラスに龍がいるんだもん!』
「あっそ。ってか、結婚…するんじゃなかったのかよ?あの彼氏と」
『いつの話してんのよ~、もう別れたよ』
「そっか」
『あれ?もう私には興味ないわけか!そっか彼女いるもんね』
あの彼氏とは別れた、ということを聞いた俺は、驚くことも嬉しがることもなく、何も思わなかった。時が経って、離れていると、こうも気持ちは変わっていくものなのか、と実感してしまう。少しこのことが怖かった。脳裏にまた、雅が浮かんだから。
俺が深刻に考えていると、広佳が俺にまた話しかけてきた。
『あ、コンビニいこっか!』
「はぁ?遠くね?」


