「まさか、彩美が来てくれるなんて。まじで驚いたよ。本当、最初夢かと思った。」

照れ臭くて、俯いた。

「どれくらい、あそこにいた?」

「7時間・・くらいかな。」

「7時間!?」

私の答えは、隼人の予想を越えていたようだった。

「お前なんでそんな・・。」

隼人はそう言いかけると、手で自分の口を覆った。
これも、照れている時の癖だ。

「・・でも、嬉しい。お前が、会いに来てくれるとは、考えもしなかったから。」

私は、小さくコクん、と頷いた。

今、言うべきなのかもしれない・・・。

チホちゃんとは付き合ってないって、さっき言ってた。彼女には悪いけれど、やっぱりホッとした。

やっぱり私は、隼人の隣にいたい。今、それを実感してる。


--------伝えなきゃ。あたしの気持ち。


膝の上に置いた両手を、ぎゅっと握りしめた。


勇気、出して。私。


「隼人・・、私も、ね・・、嬉しかったの。あの日、隼人に会えたこと、すごく嬉しかった。」

隼人が、背筋を伸ばしたのがわかった。真剣な表情で、私の話を聞いてくれようとしている。

「あの日本当は、気づいてたの。隼人が、あの場所にいたの。」

「え?」

「でも・・、声、かけられなかった。チホ・・ちゃん、が彼女かなって思って・・。それに私は・・、」


ひとつ、空気を吸い込んだ。


「私は、隼人を傷つけたから。」


実際本人の前で声に出すと、それは異様な重さを伴った。どんなに謝っても、許されないような気がした。