もう何時間、ここに立っているだろう。朝からだから・・・、優に7時間くらいは立っているのかな。
昨日は雪が降ったとかで、今日はすごく空気がすんでいて、寒い。手はもう冷た過ぎて、感覚がなくなってきている。

私が立っている門の中へ入っていく人、そして出ていく人たちが、不審そうな目を露骨に向けてくる。


でもめげない。


あの人に会うまでは------。














14日、恋人たちのための休日に休みをもらった私は、前日に仕事が終わった後、料理長に頼みこんで、一緒にフォンダンショコラを作ってもらうことにした。

本来は、営業時間外のキッチンの使用は禁じられている。しかしどうしても、私にはそれを作る必要があった。

4年前は、受験という壁があったにせよ、渡したかったのに当日には渡せなかった。


もう一度、私の気持ちを伝えるためには、ここから始めなくちゃいけない気がした。


「ずっとずっと想ってきた、大切な人にあげたいんです。」


料理長のなぜ?という質問に、私はそう答えた。彼は渋い顔をして押し黙った後、


「・・・わかった。真剣みたいだからな、協力しよう。」


そう言ってくれた。


かくして、私は料理長からの手ほどきを受けながら作ったフォンダンショコラを手にして、あの人--隼人--のいる、大学の前までやってきていた。