暫くして燿十がそっと沙柚を離した。
沙柚が頭一つ分くらい高い所にある彼の顔を見てみると、恥ずかしそうにこちらを見て言った。

「あ〜…わりぃ、いろいろ頭にくることがあって、お前に当たっちまった。」

燿十は、ぽりぽりと頬を掻いていた。その行動が可愛くて沙柚は笑った。

「ふふっ、」

「なんで笑ってんだよ?」

「なんか、可愛いな〜、と。」

ふふっとまた笑う沙柚に燿十はむっ、とした。

「人がせっかく謝ったっつーのに…。」

恨めしそうにこちらを見てくる彼に、沙柚は言った。

「謝る必要なんてないんじゃない?」

「……は?」

燿十は驚いた。抱きしめてしまったのに、謝らなくていい!?燿十の考え…いや、妄想は、あらぬ方へと進みかけているとき、沙柚が言った。


「だって、1人ですべて抱え込むより、誰かにぶつけたほうが、スッキリするでしょ?それに、打ち明けてくれたほうが嬉しいよ!」

燿十は、ガクッとうなだれた。自分の頭、おかしいんじゃねーのか。
と心の中で突っ込みながら。沙柚を見てみると、ニッコー!と笑いながらうんうん、と頷いている。

「ふ、そうだな。」

燿十は沙柚を見ていると、1人考え込んでた自分が馬鹿みたいに思えた。

「ありがとな、沙柚」

わしゃわしゃ、と沙柚の頭を撫でた。

「、うん!燿十はそっちのほうが似合ってる!」

えへへ、と笑う沙柚に、呆れながらも救われたような気分がした燿十だった。