「今日はいろいろあったな〜…………」


ポツリと沙柚は自分の部屋から見える外の景色を見ながらつぶやいた。




あのあと、食堂で別れた翔が部屋を用意しておいてくれたみたいで、燿十がここに連れてきてくれた。
燿十は、自分が疲れたからだ。と言っていたがお礼を言っておきたかったので言った。
それから、提灯小僧がご飯持ってきてくれて少しだけ話して帰って行った。明日も来てやる!とか顔真っ赤にしていってたのがまた可愛らしかった。
お風呂は、シャワーだけ使わしてもらった。
実はというとあまり覚えていない。


今、部屋に敷いた布団の上に座り外を見ていた。



夏前の季節なのに、ときどき吹いてくる風が冷たくて、虫たちの鳴き声すら聞こえない、静かな夜。
夜空には、ぽつんと月が浮かんでいた。
まるでこの夜に、この世界に、自分1人だけだ。
と言うことを知らしめているみたいで、無性に寂しくなった。

「みんな何してるかな?
あっちも夜なのかな?
夜だったらお母さん達探してるよね?
心配、してるよね……………………………………っ」


沙柚は考えたくなくて、口早に話したが、余計につらかった。"もとの世界"を考えると、"この世界"で1人ぼっち、ということを否が応でも分からされて…………


「っ…!ひと、りぼっ、ち」



翼天だ、とか妖とか、異世界だとか、一気にいろんなことが起こりすぎて、
1人で抱え込むには大きすぎて、でも頼れる人がいなくて、




「〜〜っ、……っ、ふっ」




沙柚は月明かりの下で1人声を押し殺して泣いた。