【短】口悪男

「……バカ。ほら、携帯捜すぞ」


また向き直って歩き始めてしまった。


携帯のことまだ覚えてたんだ…。

……あたし、どうしちゃったんだろう?


このまま携帯が見付からなければ、ずっと一緒にいれるのかなって…一瞬考えてしまった。


それからはお互い何も喋らなかった。

でも、武蔵がゆっくり歩いてくれて…そんな空気も嫌じゃないと思えた。


赤い太陽と綺麗な空が、あたしたちを包んでいた。




「携帯見付からなかったね」


家の近くまで帰ってきたとき、あたしはボソッと口を開いた。


「……ちょっとこい」


武蔵はぶっきらぼうにそれだけ言って、またあたしを引っ張る。


連れてこられたのは近くの公園。

昔は毎日ここで武蔵と遊んでた。


あのときは武蔵といるのが当たり前だったし、武蔵といると楽しかったな…。