【短】口悪男

「……めんどくせぇから早くこいっ」


突然繋がれた右手に、顔は当然真っ赤。

あの頃とは、全てが違う…。


大きな掌に、あたしの手は簡単に包まれてしまった。

胸の鼓動がやけに早い…。


グイグイ引かれる右手を、がんばって足が追いかける。




「木多…?」


こんなときに限って知り合いに会っちゃうなんて…。


繋いだ手を離そうとするけど、武蔵は力を入れて離してくれない。

仕方なく、手を後ろに持って行って隠す。


「き、岸田!!偶然だねっ」


中学高校と同じ岸田は、もちろん武蔵も顔見知りの男の子。

あたしは中学の頃から仲良かったんだけど、ちょっと色々あって…最近はほとんど話してない。


「織田と二人で何してんの?つか、二人って…付き合ってんの?」


ストレートに聞かれて、なぜかドキリとした。

今までだったら、簡単に否定できてたはずなのに…。