【短】口悪男

「この子誰?彼女?」


「違ぇよっ」


あたしをじっと見る二人に、めんどくさそうに武蔵が言った。


「だよな!!彼女だったら紘子さんに怒られるぞ。はははっ」


豪快に笑いながら、武蔵の腕をバシバシ叩く。


「でもこれは紘子さんに報告しないとな」


もう一人の男がニヤッと笑うと、急に慌てる武蔵。


「バッカ!!言うな!!絶対言うなよ!?」




そんなやり取りを隣で見てるはずなのに、あたしは遠くにいるような錯覚に陥っていた。

あたしの知らない世界で、あたしの知らない武蔵が話してる。


「んじゃ俺ら行くからっ」


逃げるように二人から離れて歩き出す。

あたしも急いでその後を追う。


「ね、ねぇ!!紘子さんって誰?」


いつものような話し方で、異変に気付かれないように聞いてみた。

胸が少しざわつく…。