【短】口悪男

「おばちゃん当たったー。もう一個ちょうだい」


うれしそうに受け取る姿は、昔とちっとも変わらない。

やっぱ武蔵は、中身子供じゃん♪


「一人で何笑ってんだ?気持ち悪い」


振り返るなりそう言って、右手を差し出した。


「え?」


ビックリして聞き返すと、ぶっきらぼうに武蔵が答えた。


「やる」


ん、っと更に右手を伸ばす。




「……ありがと」


当たりの一個をもらったのは、きっと初めてだったと思う。

小さい頃の武蔵は、ただ見せびらかして自分で食べてたもん。


「おう」


少しはにかんで笑った武蔵に、胸がこそばくなった。

武蔵も少しは…大人になったのかな?


うれしくて、あたしもニコッと笑った。