「あのさ、綾瀬さん」
「なに」
「遠回しに好きって言ったつもりだったんだけど」
「それは気付かなかったわ」
ふう、と横でため息をつかれた。
いや、気付いていたけど認めたくなかった。
だってただでさえ心臓がドキドキしているのに、その言葉の意味を理解してしまったら、もっとドキドキして光に聞こえてしまいそうだっだから。
ベッドが独自の音を立てて軋む。
光がベッドの上に腰を降ろした。
「……そういえばなんで私の名前を知ってたの?」
「綾瀬さんもけっこう有名人なんだよ。サボり魔でよく保健室で寝てる人がいるって。俺とは正反対の人だってね」
光の手が私の右耳に触れる。
相変わらずその手は冷たかった。

