「何言ってるの?」 「気を遣わなくていいですよ。あたし見たんです。先輩が、女の先輩とキスしてるとこ」 「あれは……」 「あたし迷惑ですよね。なんかすみません。今まで……りがと……ました」 今まで無理矢理でも作っていた笑顔が、もう耐え切れなくなり、あたしは走ってその場を離れた。 ううん、逃げた。 先輩が遠くであたしの名前を呼んだのがわかる。 それでも走った。 あのままいたら、泣いてしまうから。 はは……もう遅いか。 ぼとぼとと涙が頬を伝った。