「今、家にいる?」
あたしは声をなんとか振り絞って“うんっ”だけ言った。
「待ってて。」
直矢はそういうと電話を切った。
あたしは訳がわからず、また泣いた。
だって彼女さんいたじゃん……。
指輪つけてたじゃん……。
同じ甘い香りがしたじゃん……。
もぉ、全然わかんないよ……。
♪ピンポーン♪
インターフォンが鳴った。
直矢だ……。そういえば直矢が家に来るの、初めてだよね?
ずっと遠慮して言えなかったんだ。
あたしは涙を拭き、玄関のドアを開けた。
前には黒い眼鏡をかけた直矢が立ってた。
大好きな……大好きな直矢が。



