「雛………」
あたしの名前を切なそうに呼ぶ直矢。
「ごめんねっ……ヒック、いき、……いきなりこんなの……」
泣きすぎて上手く喋れない。
でもこれが今の精一杯なの……。
「……好きだよ」
耳に甘い声が響いた。
泣くのも止まるぐらい、あたしは固まってしまった。
「俺、雛のこと好きだよ?」
直矢の声が頭を駆け巡る。
あたしはなんにも喋れないまま、静かに涙を流した。
「雛、俺彼女なんていないよ?」
あたしは、“え?”と心の中で言った。
本当に驚きすぎて言葉が出てこない。
「誰のこと言ってんのか知らないけど、俺が好きなのは雛だけ。」
直矢の言葉に涙がどんどん溢れ出す。
「泣かないで雛……」
優しく、囁くように言う直矢に胸がキュンとする。



