そして寒くて真っ赤な頬に、また涙が一つ通った。
ピアノの音がだんだん消えかかるにつれ、あたしのうちが見えてきた。
あともう少し……。
……チャチャーン
曲が終わったのとほぼ同時に家についた。
あたしはイヤホンをはずしながらドアを開けた。
「ただいま……」
「………」
家の中は物音一つなく、静まりかえっていた。
あたしは廊下を歩き、リビングに入った。
だけどやっぱり誰もいない。
あたしはお母さん達の部屋に行った。
なんでかわかんないけど冷や汗が流れてた。
………嫌な予感がする。
あたしはお母さん達のタンスを開けた。
そこにはもう……なにもなかった。
いつもかけてあったコートも、お父さんの通勤カバンも………。



