ベリル自身も少し熱っぽい感じがわかる。しかし、それ以上の症状は全く現れない。

 それは不死になった瞬間、自分の全ての時間が止まり、そして人間であれば誰しも体内に共存している細菌がその時全てがエネルギーとなり消滅。細菌だけではなく彼の体内に入ったのもは全ては、エネルギーとなり全てが消滅する。

 ベリルと共に生きる事は叶わない。ベリルには、今となってはただそれだけの事。

 そして昔、誰も知らない心の奥底で望んでいた願いも、今のベリルのままでは一生叶わない……それもその時の状況がそうさせた事。
 仕方がない事だと全てを受け入れた。
 
 そのため今がある事も嘘ではない。

 リッキーや院生だけじゃなく、それを知った人々はベリルを、羨みそして憧れ、神々しいとされる不死という力。

 しかしこの目の前の少年には何の役にもたたない事を本当に辛いと感じている。

 ベリルだから出来る事……それは少年の近くで見守り、本当に神が居ると言うのであれば祈る事。ただそれだけだ。
 
 そんなベリルを、虚ろな瞳でアザムは確認する。そして弱々しい声で問いかける。

「た、他人なのに……どう、し……て」

 死んでも困らない一人の死にそうな孤児。
 それなのにずっと傍らに居てくれるベリルに、どうしても聞いてみたかった。

「……人を助けるのに理由は必要なのか? 助けたいから助ける、それが人としての当たり前な感情」
「あ、あたり……まえ?」
「確かに、過ちを犯したと言えどレイだって、ティーロだってそうだ。リッキーだってお前の事を助けたいから協力してくれた」

 それを聞いてアザムは小さく涙を流し、そのまま安心したように眠ってしまった。

 そしてアザムはそれ以上の悪化は診とめられなかった。
 しかし、意識の混濁した数日繰り返す。

 ベリルはその間、検査している時以外は、ずっとアザムを見守っていた。