そして次の日、二人は朝からゲームをしている。

「……また負けた」

 うな垂れるアザム。一時間前レイとやったことのあるサッカーゲームでボロ負け。
 今度は、ベリルがしたことのないと話していた格闘ゲームをしていた。

「甘いな少年」

 冗談ぽく言うベリルに、膨れっ面をして答えるアザム。

「ちょっとくらい手加減してくれても――」
「されたらされたで、怒るんだろ?」

 言い返せないアザムを笑って見ているベリル。


 その時、スピーカーから仮眠をしていたはずの、リッキーの慌てた声が聞える。

[あ、あのベリル! アザム君を触ってみて?]

 ベリルは言われたとおりに、アザムの頭や身体等に触れる。
――身体が熱い……潜伏期間がほぼ無く症状が出始めている?


[……申し訳ない、もうちょっと早く気が付くべきだったよ]

「いや、リッキーありがとう。アザム、ベッドへ行きなさい」
「え?……うん、わかった」

 アザムはもう少し遊んで居たかったのが本音なのだが、ベリルの表情の険しさと、リッキーの心配そうな声を聞き大人しくベッドに向う。
 ベリルはまず採血の用意をする。血液は今後も毎日調べるために採血をする。
 
 子供の血管は細いのだが手際よく進めてゆく。

「……おじさん、本当のお医者さんみたいだね」

 レイの場合なら痛く無いのが当然だが、“傭兵”であるベリルと考えると、それは当然ではなくなる。

 その血液は容器に入れ保存し、奥のテーブルの細菌を観察できる顕微鏡とパソコンの設置されている机に置く。