そして、着信の名前を見てため息をついて携帯を耳に当てる。

 <ベリル、いい加減にしてくれ!>
「……もう少し小さな声で話して頂いても十分聞えるのだが?」

 離れた場所にいるアザムにもメイソンだとわかるほどの大声が携帯から漏れている。
 
<いったい何処に居るんだ?>
「さてね……あ、これ逆探知は無駄だから」

 そう言いながらガスレンジに向かい火を付けた。

<何の音だ!>
「ん? コーヒーでも飲もうかと湯を――」
<何処の家だ!!>

 ベリルはポケットから数枚の紙切れを出して、炎に近づける。その紙の燃える様を眺めてからシンクに落す。紙切れは完全な灰になる……

「さーて、どこだろうね? あ、レイという青年を拘束していと言ってたが?」

 まるで思い出したように言っているが、今のベリルの声色はとても冷たく、威圧感を与える。

<あ、ああ>
「……彼には手出しをしてくれるな」

 態勢が、今の瞬間逆転した。電話の向こうで焦りが隠せないメイソン。

<ど、どういう意味だ!>
「はは、貴方自身お分かりだと思いますが?」

 そういい残して、ベリルから電話を切った。