「私は死なない……不死だからだよ」
「……え?」
「うむ、これでも私は六十歳以上だよ」

 ベリルの言葉に次の言葉が見つからない。数日ほどは危険がないので、安心させるために一緒にこの中に入ってくれたのではないかと思ったアザム。

「え……冗談だよね?」
「いや、嘘ではないさ」

 ベリルは優しい笑顔をアザムに見せる。


 そして、部屋の外を一度見るように促がす。アザムは言われたとおり顔を一度上げ見回す。
 
 ガラスの外から中を覗いている、数人の白衣姿の男女を確認する事が出来た。すぐに下を向くアザム。

「ねえ……あの人たち何をしているの?」

 ビクついて小声になるアザム。

「ここを借りる為の条件だ」
「条件?」

 そう言い放つベリルに眉をひそめるアザム。

 
 普通、危険性のあるウイルスに対処する場合、保健所や行政への連絡が必要となる。
 だが、アザムが持っているウイルスは国が関わっているウイルス。連絡をされる事は避けたい。

 学長に、詳しいウイルスの内容を訊かない事、保健所、行政への連絡をしない事。そして無菌室を過ごしやすい環境に整える事の条件を承諾させた。
 
 その代償にアザムのウイルスの危険性だけを伝え、自分がその少年と共に過ごす中で不老不死であるベリルを観察させる事を条件として出したのだ。

 もちろん、データとしては残さないという条件であっても、学長はベリルという人物との繋がりを保っておく方が利益になると判断したのだろう。