ただ、思っていた以上に過ごしやすそうな事を疑問に思っている……

「ウイルスは眠っていて、五、六日後に目覚めるだろう。その後、潜伏期間を経て発病、ウイルスが体内から消滅するのは、最低十日は必要と考える」

 アザムはベリルの話を一つ一つ頷きながら聴いている。リッキーも今後の行動の知識として聴いている。
 
 二十日から一ヶ月というのはその後の体力の回復もあり、それ位の猶予期間が必要かとベリルが考えた余裕の日数だ。

「症状が出たら、その時点で血液検査からしていく。……後は症状次第だ」
「……うん」

 アザムは小さい微笑をベリルとリッキーに見せる。
 ベリルの言葉はアザム自身が置かれている状況、立場を今まで以上に自覚させてゆく。
 しかし、自分を必死で救おうとした人達が居た事で、ここまでたどり着いた事実を理解する。
 
「リッキー、後の事は頼む」
「OK、任しておいてよ」

 ベリルとリッキーのやり取り。
 その言葉を聞きアザムは覚悟をしたようにガラスで出来た扉の前に向かい立つ。

「おじさん、今まで本当にありがとう」
 
 そういって微笑み軽く頭を下げるアザム。
 ベリルは信用できる病院を見つけ、無事に少年を送り届けた。
(後は病院に託される……)
 
 これは“ウイルス”病院の分野。

 子どもの頭でも当たり前に理解できる最善の方法だろう。