そのまま進んで行き二人は小さな部屋に通された。しかしその部屋の中見てベリルもアザムも顔をしかめた。

「ああ。ごめん研究に忙しくて……」

 辞書、研究本に資料。そして脱ぎっぱなしの衣服までが机やイス、ソファーに散らかっている。

「自分専用の部屋だとしても……もう少し整頓くらい出来るだろ」

 ため息混じりに言うベリルに青年は苦笑いを浮かべる。

 アザムはこの青年の存在にいろいろと疑問を抱き質問をする。

「おじさん……この人誰?」
「ここの大学院生だ」
「挨拶が遅れましたね。初めまして、リッキーです」

 リッキーは少年の目線まで腰を落とし自己紹介をする。
 
 そして、ソファーの衣服などをとりあえず退けて、アザムとベリルを座るように促した。
 
 アザムはとりあえず座るが、ベリルは立ったままリッキーと話をしている。

「学長から事情は聴いています。二人の事は僕が一任されてますので、医療機器やモニター等での観察は僕だけになりますので安心してください」

「初めは渋々だったのだがね……“この条件”ならと全てを呑んでくれたのだよ」

 続きを話そうと思ったが、部屋の電話の内線で準備が整った事の連絡が入る。


〔リッキーさん居る? 出来ましたよ〕

「出来たみたいだね?」
 リッキーはベリルに準備が整った事を、目で伝える。
 
 状況が読めていないアザムはきょとんとしたまま座っている。
 ベリルはそんなアザムの腕を取り、立たせるとやさしい微笑を見せる。

「アザム、とりあえず違う建物に向かう」

 
 今居る建物から一度出て、もう一つの建物に入ってゆく三人。