工場内の機械よりも、かなり目立つ濃い紫色をしたスポーツカーが一台。

 ベリルの車が入ったことを確認したら、一人の男性が入り口のシャッターを降ろす。

 「格好いいだろ?ベリル、お前に一番お似合いな色だと思うんだけどね」

 その派手さに驚くアザムは、初め唖然としていたが、そのスポーツカーを歩いて眺めている。
 金色の短髪の男の言葉に、ベリルはその車を見ながら苦笑いをする。

 「確かに……特別仕様だな」
 「だろ?」
 
 満足げな顔をして受け答えする男とベリルは車の鍵を交換する。

「ルイス、よろしく頼む」
「おう!了解」

 ルイスは返事を返すとシャッターを上げ、ベリル達が乗っていた車に乗り込み、窓から手を出し振ると工場から出て行く。
 
 それを見送るともう一度シャッターを降ろすベリル。

「今の人は――」
「時間稼ぎになって貰うために、街を走ってもらう。そして私達はこっちに乗り込む」

 アザムの“何故あの車に?”という疑問にスポーツカーを指差しながら答える。そして車の扉を開き、すぐに携帯をカーナビに差し込む。こちらの車もベリルの車同様のカーナビで、普通のカーナビとは異なる形となっている。

「あの人も傭兵なの?」
「ああ、最近出来た仲間だ。楽しい奴だろ?」

 アザムの質問に同意を求めるように笑顔で答えるベリル。思わず本心が出て頷くアザムの姿。