そしてアザムは思いついたように話を切り出す。

「ねえ、おじさんはボクを助けて何か貰えるの?」

 ティーロが無理やり託したような形で引き取られたアザム。
 そこにはベリルが利益を得られるような話は見えなかった。
 
「成功すれば、ティーロから貰えるだろう……それにもう一人にも請求は可能だろうな」
 
 

 その答えを、含みを持たすような言葉でアザムに話す。
「……え? もう一人って?」

 眉間にしわを寄せ首を傾げるアザムの姿。
 ベリルは姿勢を正しながら事実を話し出す。

「ティーロ一人ではアザムを逃がすことは難しかっただろう。もう一人協力者が居たって事だよ」
「も、もしかしてレイさん? いや、違う! レイさんはボクに……――」

 頷いたベリルに、首を横に振るアザムの姿には信じたい気持ちと疑いの気持ちが見える。少年はそのまま唇を噛み、下を向いてしまう。
 
 そのアザムの姿を見て小さいため息を見せ苦笑いをするベリル。

「FBIから聞いたのだが、社長の逮捕時に、危険なウイルスを取り扱う部屋に閉じ込められていた青年が居たそうだ」
「えっ!?」

 驚いて顔を上げるアザムに、言い聞かすようにエメラルドの瞳を少年の瞳と向き合わせ話を続ける。

「社長を裏切ってお前を逃がしたから身代わり、もしくは他の薬のマウス代わりの為に閉じ込められたのだろう」
「そ、それじゃあ……ボクのために!?」

 小さく頷くベリル。

「ああ、オニキスから出てきたメモの内容は、お前に打った物の医学的情報だった。そしてFBIから聞いた青年の名はレイだったよ」

 少年は膝を抱えて下を向き、小さく震えながら涙を流した。

 ベリルはこれ以上言葉をかけずに、アザムの頭を軽く撫でながら見守った。


 少年が泣き疲れて眠る時までずっと……――