そして車を駐車場から走らせながら続きを話し出す。

「だから、二日ほど身を潜めるつもりだ」

 アザムはただ一度頷いた。
 何故二日なのかは理解は出来なかったのだが、全てを知っても何も変わらず接してくれているベリルに、少しずつ心を開いている。

「本当、不思議な人だね。そういえば、ティーロさんも不思議な人だったなぁ……」
 
 小さく笑いながら話すアザムの言葉に、ベリルは思い出したように話し出す。

「ティーロという男だが、製薬会社に居たのか?」
「うん! 会社のエスカレータにいつも居る警備員さん」
「元傭兵とはいえ、なぜ私にたどり着いたのか不思議だった」
「同じ仕事をしていたの?」

 首を傾げるアザムに、ベリルは微笑を浮かべながら話を続ける。

「ああ、向こうは私の事を直接は知らんだろうがな。私は別の要請で現地には居たが、彼はよく動いていた」
「そっか、だから兵隊さんみたいだったんだね」

 ダルコから連絡は貰ったが“様子が普通じゃない事と元傭兵”としか聞いていなかったのだ。
 元とはいえまず傭兵にアザムが助け出されたのか等、接触時はそれどころでは無かったのだがその理由が解った。
 ベリルは全てが繋がった事と傭兵の頃のティーロを思い出し懐かしそうな顔をして微笑む。


 ティーロに関しての疑問は二人とも解けた。
 
 しかしベリルが年下の人に言う雰囲気だったため、今度はそれが疑問になるアザム。ティーロは明らかに四十歳は過ぎている。
 (おじさんは偉い傭兵さんなのかな? それにいろいろと不思議で謎な事が多いし……)
 
 “素晴らしき傭兵”の本当の意味をまだ少年は知らない……――