その方向から丁度黒塗りの車が近づき、そしてゆっくりと止まる。その車からは落ち着いた色のスーツを着た体格の良い男が数人降りてきた。
 
 
 先にその男達はベリルが捕まえた男二人を車に乗せた。

 
 その後スーツ姿の男三人がベリルに近づき、一人が無表情で無感情な感謝の言葉を言う。
 
 ベリルはそれに微笑で返し、アザムには車に乗るように促がす。

「その子は置いていってもらおう」
「断る!」
 
 男にベリルは、その言葉を睨みつけるように返した。
 力ずくでもと態度に示した二人の男を、一人が制止する。

「まあ、それが賢明な判断だ」

 口は笑いを浮かべているが瞳は笑っていないベリル。自分も車に乗り込みその車はガソリンスタンドを去ってゆく。

 その車が小さくなるのを見るしか出来ない残されたスーツ姿の男達。それを車の中のミラー見送りながら小さく笑うベリル。
 
 とりあえずベリルは街の方に車を走らせていた。これからの事を考えながら……