そこにはライフル銃を持った、中東を思い起こさせる顔立ちの男が五人立っていた。

「ど、どういうこと! あの人たちは誰……“素晴らしき傭兵”って嘘だったの!?」

 震えながらも睨みつけそう言い放つアザムの腕をベリルは掴む。

「嫌だ! は、離して!!」

 ベリルは冷たい微笑を一瞬アザムに見せた。言葉を失うアザムは涙をこらえながら、ベリルに引っ張られる様な形で運転席から車の外に出る事となる。


 青年と少年を確認して、少し前に立つ男が話す。

「お前がベリルだな」
「ああ、そして話していた子ども……こいつの事だろ?」

 ベリルは今言葉を発した男にではなく、その後ろに立つ四十代ほどで髭を蓄えたリーダー格の男に視線を向けながら話している。

 その男はアザムを上から下まで確認するように眺めると、ベリルの足元に大きめの布の袋を投げ話し出す。

「ベリル、お前から連絡をしてくるとはね」
「たまには、楽してみるのもいいもんだと思ったんでな……」

 ベリルとリーダー格の男とのやり取りに今まで以上の絶望感を憶えたアザム。
 その少年のまぶたの涙は耐え切れなくなり、コンクリートの地面を濡らしていた。

 下を向き小さく微笑むベリルは、そのまま投げられた布の袋を手にかけようとしたが手を止め問いかける。

「ところで……子どもにウイルスを眠らせ抗体も同時に運ばせたって事は、お前達は抗体を打ってないってことだよな?」
「それがどうした」

 ベリルの問いに不信に思ったリーダー格の男。

 ベリルは喉の奥で一度笑い、腰から銃を取り出し、一番初めに話しかけてきた男の左太ももに命中させた。
 そして弾は貫通し地面に当たった。その男は痛さでその場に片足をつく。

「きさま!どういうことだ!!」

 リーダー格の言葉に、皆がライフルをベリルに向ける。