車に乗り込み、簡易ホテルを探す。

 派手なネオンが目に入ってきた。その中で、手ごろなホテルを見つけ、車を駐車スペースに止めて二人は入る。

 カウンターには男が一人居て金を置くと、奥にある部屋を指差す。
 
「あの角の部屋だ」
 
 無愛想な一言だけが返ってくる。

 二人は部屋に向う。正直綺麗とは言えない部屋だっただめ、眉間にしわを寄せるアザム。
 
「その製薬会社のベッドとは大違いだ……」

 しかし、すぐにベッドに寝転がりながら笑って言う。

「なんてね! ここなんてかなり良い方だよ」
「そうか……」

 小さくそれに答えるベリル。
 
 戦争孤児であり今置かれている状況、この少年の複雑な気持ちを読み取ってしまった。
 アザムの居るベッドに腰を掛け足を組む。

「お前は、国に帰りたいか?」
「帰っても……」

“生きるのも大変な場所だから生きていける、生き続けられるとは限らない”
 
 無言の後の言葉はきっとそう続いていた事にベリルは瞳を閉じる。

「……そうかもしれんな」と小さく言葉を一つ返した。