到着した日はさすがに疲れていたのだろう。部屋に案内したらすぐにベットに寝転んでしまっていたようだ。

 翌日はレイが朝食を持っていくまで、そのままの服で寝ていた。
 


 レイはアザムにこの二日間で製薬会社を歩き案内している。
 
 レイに現在与えられた仕事は、アザムを‘信用’させる事。時間が多く与えられているわけでもないのは確かだ。

 実験や作る薬品にもよるのだが、ガラス張りになっている部屋や実験室がある。製造過程や検品などが見えている。‘クリーンなイメージ’にも繋がるということで、一般の見学客も引き受けている。
 
「ここは古い薬の改良をしています。もっと飲みやすくして、もっと早く元気になれるように変えてるのです」
 
 アザムと同じ視線になるように座り込んで、微笑みながら話すレイ。表情は少々硬いながらも微笑むようになったアザム。

「そろそろお昼ごはんですかね? 一度部屋に戻りましょうか」

 レイはそう言うと立ち上がって、すぐにエスカレーターの方向を見た。
 アザムと瞳を合わす事が出来なかったのは、その迷いのような‘曇った瞳’を見られたくなかったからだ。
 
 そして自分の改良室前での‘言葉’と今の自分自身との‘矛盾’に立ち止まってしまった。

 アザムはそんな事に気が付かずに、先にエスカレーターに向って走り出していた。

 そして立ち止まっているレイに気がつき振り向く。