「何名様ですか?」

 レストランに入ると、ウェイトレスはベリルしか見えてないような雰囲気。

「二人だ」

 ウエイトレスの金髪の青年を“意識”した笑顔と“無意識”に笑顔を見せるその青年ベリルの姿。


 席に案内され横にあるメニューをベリルはアザムの方に広げてやる。

「食べたいものを頼めばいい」
「じゃあ、カルボナーラとシーフードのピザと後、エビドリアにホットドックと――」
「ああ、この子にはシーフードピザとコーラ。そして私にはホットコーヒー。以上で結構です」

 さっきのお返しに、沢山頼んでやろうとしたアザムの計画は、ベリルの笑顔の注文にあっさりと負けた。

 少年の前に運ばれてきたシーフードピザの匂いに負け、“食べない”という嫌がらせは出来なかった。

「ピザいらないの?」
「ああ、私はこれだけで“十分”だ」

 軽くコーヒーを指し小さく笑う。そして携帯を取り出し電話をかける。

『ケインどうだ?』
<大丈夫だ。ギリギリだったとはいえ応急処置が完璧だったからな>
『それはよかった。すまんが後のことも頼む』

 
 ケインという人物が医者だという事を、ベリルに引き渡された時の電話でアザムは理解していた。そのやり取りを見てアザムは、ティーロが助かった事を知る。少年は安堵し、心の底からという言葉が似合いそうな、深く息を吐き出した。
 
 その電話を切り、そんなアザムに“よかったな”という笑顔をみせた。