車の中で会話を聞いていたアザムは、自分の立場を理解出来ている。自分が騙されていた事を……
 頭の中はいっぱいになって、心は空っぽになっていく。
(ボクはこの大人の人を信用してもいいの?)

 そしてさっきと変わらず、いや少し違う思いでベリルを見る。

「ところで腹減ってないか?」
「え、いや、別に!!」
 
 ベリルに突然質問され、慌て又窓の方を見るアザム。

「ほぅ、そうか――」
 
 ベリルはそう言いながらゆっくりと車を止める。
 
 そして片手でアザムのこめかみ辺りを握り締める。もちろん手加減はしているが。

「うわあああぁ! ごめん、ごめんなさいってーー! すいてる、すいてます!!」
「うんうん、子どもは素直が一番だ!」

 わざとらしい言い方をベリルはアザムにする。そして近くの小さなレストランの駐車場まで走らす。



「着いたから、降りてくれないと困るのだが?」
「……――」

 涙目になりながら無言で車から降りるアザムは、ベリルの後ろをとぼとぼと歩いている。
(やっぱり、何か信用できない気がする……違う意味で)