返事を聞くとベリルだけが車の外に出て、自分の車にもたれ掛かる。後ろの車からも大柄な男と細身の男が出てきて、二人はベリルに近づく。

「何か私に用でも?」
 
 ベリルが尋ねると、睨みつけるようにベリルを見ながらFBIのバッジを見せる。
 
 小さくため息を吐いた青年。
(やっぱりな……)

 大柄の男が先に丁寧な口調で答える。

「あの車の中の少年を引き渡しては頂けないだろうか?」
「何故? 理由はなんだ?」

 大柄の男は言葉に躊躇してしまう。そうかと思えば、細身の男が厳しい口調で逆に質問をする。

「知っていて、訊いているのか?」

 二人ともどこか警戒をしている。二人とも何者なのか自体は分らないが独特の雰囲気だけは読み取れる。

「私はベリル。傭兵をしている」

 警戒をされている事を感じ薄笑いを浮かべながら自分の名前を名乗る。
 すると傭兵と聞き納得する男二人。

「少年を渡す事は拒否させてもらう。それは私への依頼だからな」
「傭兵ごときが護衛まがいの事など!」


 先手を打って話し出すベリルに、大柄な男は怒りのようなものを見せるが、細身の男はそれを止め質問を変える。

「では、その依頼は誰から受けましたか?」
「そういえば、名前まで聞いていないな……」
「では、切羽詰ったやり取りだったという事をご理解しての、発言という事ですね?」

 言葉は丁寧だが瞳は心を探っているようにも見える。

 警戒を解くというよりは自分の意思表示のためにベリルは微笑を見せた。