アザム自身も自分の事を把握し切れていない。

 自分がここにいる経緯も含め、ティーロが言った“殺人ウイルス”の事だとか……
 そして、そんな“殺人ウイルス”を持った子どもを簡単に引き取る大人を信じる事は出来なかった。
(どうせ大人なんて自分勝手な……)


 ベリルはベリルで、今までにないタイプだとため息交じりでアザムを見ている。

「とりあえず此処からは移動する」

 正面を向いて車を進め出すベリルを、じっと睨んでいるアザム。

 ベリルにはさっきの男に聞けなかったことが沢山ある。推測していくには、アザムから聞き出さなければ何も始まらない。
 その“殺人ウイルス”を持つまでの経緯、過程が必要となる。

 しかしベリルには、それ以前に聞いて教えてくれるようには見えないがそうも言っていられないのが事実。