ティーロはもう一度大きい通りを見てみると、同じ通り側を歩く明らかに雰囲気の違う青年が辺りを見回しながら歩いているのが見えた。
 ティーロとは歳が一回り以上違いそうな金髪の青年がこちらに向って歩いてくる。丁度自分が居る路地を通るときに手だけを出し声をかける。
 
「あんたが……ベリルか?」
「ああ、そうだが……電話は君かね?」
「……ああ」

 ティーロにはもう立っている力は残ってはいない。アザムを抱きかかえ歩く事が出来ない。アザムの近くに誘導するかのように這いつくばって移動する事しか出来なかった。

 通路の中に入ったティーロにベリルは付いてゆく。苦しそうな薄ら笑いを浮かべてこっちを見ているのをみているベリルはティーロに近づいた。
 
 赤黒い液体が流れて続けているのがわかる。
(ダルコの元傭兵の様子がという電話はこういうことか……)

 信用があっても簡単に他人の連絡先を教えた事でティーロの電話の後直ぐに、他人に教えた謝罪と‘異変’の電話があった。

 それを思い出していると、ティーロは抱えるように無理やり持ち上げた子供をベリルに託す。

「こ、この子を……貴方に頼みたい」
 
 そういって苦笑いを一つ見せた。

『え……?』

 驚いた声と表情をベリルとアザムが同時に浮かべた。
 
 だが今はティーロの血の止まっていない腹部を気にするベリル。

「わし事……より」

 そう言うティーロに、今手渡された子どもをおもいきり押しのける。子どもよりも先に、どう見ても手当てが必要に見える目の前のティーロを優先させる。
 有無も言わせず、ティーロの上着を切り裂いて応急処置を手際よく行う。

 そして電話を知り合いの医者にかけ場所を把握させる。

「とりあえず、お前はここに居るんだ!」
 
 そうティーロに言い聞かせるベリル。