必死に車を走らせるしか無かった。一番近い町に着き、人の少ない場所に車を止める。



 建物に少年を抱いて下ろすとすぐに路地に隠れた。ティーロの体力も限界にきているためあまり歩けない。

 路地から少し大きな通りを見る。
 
 傭兵や軍人はその人にしか分らない何かを感じ、そして感じられる。今はそれを、元とはいえ傭兵が持つその感覚を出来るだけティーロは引き戻す。


「こ、ここは……何処」
 
 後ろから小さい声が聞える。アザムが目を覚ましたのだ。しかしまだ、少し薬が残っている様には見える。
 
「お、おじさん、だ……れ?」
 
 そう言って顔を上げた時、製薬会社の警備員のおじさんだと顔を見てわかる。
 
 ティーロはアザムが目を覚ましたことに胸を撫で下ろした。
 
「じ、自己紹介は、まだだったね……わしの名はティーロ……」
 
 苦しそうにしている顔、黒い服だが自分が居る方向と逆には血のが少しずつ流れているのにアザムは気が付く。
 
「お、おじさん怪我してるの? ねえ? どうなってるの!」

 心配でふらつく身体を起しながら近寄る。

 ティーロ自身は伝えたい事は沢山るのだが、アザムの口元に人差し指を持っていく。

 そうされて、思わず黙るアザムだが、レイや護衛の事に、まず今の状況自体等こちらも訊きたい事があった。

 しかしいつどこで、敵と遇うか分らない。この少年を探している可能性も十分にある。