車を急いで走らせたが、テロリストも護衛達も追ってくる気配が無い。それでも一刻も早く離れた方が最善。
 殺人ウイルスが打ちこまれた子どもをテロリストと製薬会社から奪ってきたまでは予定通り。
 
 横腹辺りに二発弾が入ったのは、最悪を考えての想定内。横腹からはじわりと血が滲み出しているのが目立つ。
(いくらなんでもこの格好とこの血じゃな……)

 

 ここまでくれば安全だと思った場所で一度車を止める。用意していた黒のシャツとズボン姿に茶色の軽めの上着を羽織る。
 小さな病院に連れて行って説明しても、理解は得られないかもしれない。
 
 それどころか自分の怪我の方が先と絶対に言われそうな格好だ。
(もう少し大きな町までは走らそう)

 車を走らせながらいろいろと思案するティーロ。病院か、誰かどうにかしてくれそうな人……
 その時自分がまだ現役時代だった頃、ダルコという傭兵が『凄い傭兵がいる』と話していた事を思い出す。
(私よりも年下なので現役かもしれない)

 辞めてから連絡は取ったことは無いのだが、躊躇している場合ではない事は自分が一番よく分っていた。
 縋れるのであれば何にでも今は縋りたい。