頷くアザムに、レイはさっき買っておいたペットボトルのオレンジジュースのふたを開けて渡す。


 ジュースを飲みながら外の景色をずっと無言で見ている。

 “見るもの全て”が今までの自分が体験したことないものだったから、アザムは沢山瞳に焼き付け記憶に留めようとしている。
 
 胸に手を当てている姿はきっとあの“ペンダント”に見せたかったのかもしれない。

 
 暫くしたらアザムはレイの肩を借りるように眠っていた……
 
 「眠ったようですね……。おやすみなさいアザム少年」

 必死に“偽り”を前の二人に見せつけるように、レイの冷たい瞳は前を見据える。
 
 車は話していた丘に一度止め、アザムに布のような物を巻いておき、倒した三列目の座席に寝かした。
 
 
 アザムは結局、その丘から見えている風景を見ることは出来なかった。

 オレンジ色になり始めた空を少年の瞳に焼き付ける事は叶わなかったのだ。