レイは約束の少し前の時間にアザムの部屋を訪れる。


 眠そうなアザムに顔を洗ってくるように伝え、その間に着る服を用意してやる。

「とりあえずこれを着てください。スーツよりラフな方がいいでしょ?」
「確かにあの普段着とサスペンダーっていうやつよりは気楽でいい……」
 
 普段の服の文句を言うアザムに、ジーンズとTシャツをまず手渡した。

「これに合いそうなベルトが無かったので、このヒップバッグで我慢してください」
 
 そういいながら斜め後ろにバッグが来るようにレイはつけて、少し大きめのパーカーをすぐに着させてやる。

 なるべく‘ヒップバッグ’が目立たぬように……
 
「いつもの服に上着とか社長なら言い出すからそれはちょっと固いので止めましょう」
 
 すぐに話題を変えてバッグの存在を忘れさすレイ。一応これも先に伝えておく。
 
「アザム君は社長が父親なので……怖そうな人が今日は二人付いてきます!」
「えーー!ガルナさんみたいなのが二人も来るの」

 アザムの物凄く嫌そうな顔に苦笑いを浮かべるしかない。

「あの二人は前に乗ってもらいますし後ろに私と乗りますから、居ないものだと思ってください」