アザムの居る部屋にノックをして鍵を開ける。
 
「アザム君おはよう。用意は出来てるかな?」
「い、行かなきゃダメ?」
「ええ、行かないと今日も部屋に閉じこもりたいですか?」
 
 しぶしぶという感じの顔をするアザムが部屋から出てくる。

「そんな顔していたら“おじさん”とすら呼ぶのは遠そうですよね……」
 
 レイは苦笑いを浮かべながらアザムの横を歩き、社長室の扉を照合し開いた扉の中に入る。

「失礼いたします。アザム君をお連れいたしました」
「ご苦労様。アザム君ともっとお話する時間が取れれば良いのだが、いつもレイにまかせっきりで申し訳ないね」

 レイに懐いているせいか、初日よりはアザム自身の心の壁も薄くなっているように伺える。
 
「いえ、社長をしている人だから……お、おじさんは……」

 無理しているように見えるがアザムなりに、ジェイコブやレイの事を考えたのだろう。

「ゆっくりと慣れていけばいい。二日間は外に出られなくて暇だっただろう? 今日は敷地内の生薬のビニールハウスの見学とかしてきたらどうだい? 私が行ければ良いのだが今日も明日も学会で忙しいのでね」
 
 アザムは学会だとか生薬の意味は理解してはいないようだが、建物の外というのは理解できている。

「まあ、薬草の畑ですかね。大きな庭園もありますので、気晴らしにもなりますよ?」
 
 レイはアザムに、この話を切り上げるために説明をして納得させる。