次の日、朝から上層部の人間とは思えないようなレイの姿。“明日でいい”と言われたゲーム機やソフトと紙袋を手にしている。

 そしてエスカレーターの近くで大きな物音がする。レイの持っていたゲーム機の上に乗せていたソフトや配線が床に散らばっている。
 冷たい視線を警備員向ける。明らかにティーロを呼んでいる。
 
「手が離せないのだ、この上に乗せてくれんかね?」

 そういってティーロとレイは中腰になる。配線やCD型のソフトを順番に落しにくい形で命令に従うティーロ。
 
 レイはティーロにしか聞えない声で伝える。その瞳は昨日の休憩室の時の瞳をしていた。

〔このまま聞いてくれないか?そこに小さなメモリーも落ちている“トレバ”で三つ目を見てほしい〕
 
 そういうと、ティーロは小さなメモリーは袖に隠し、後は黙々と残りのソフトを拾う。袋の余裕にも気がつきそこへ入れてやる。

〔レイさんは指紋の照合、どうやってするつもりだったのですか……〕
 
 勢いで思わず両手が塞がっている姿を見て言ってしまったティーロ。素の引きつった薄笑いを浮かべるレイ。

 全て拾い終えるとさっきの小声の時とは違い、いつもの瞳と口調で話すレイの姿。

「手間を取らせた……」

 二人は別々に何事も無かったように自分が居るべき場所、向う場所に……
 ティーロはエスカレーターの中央でいつものように警備。
 レイはエスカレーターで三階に行き、指紋照合で四階に行く。